進撃の巨人ししゃも的考察ブログ

既読者向けです。進撃の巨人を読んだ感想をまとめていきます。Twitter:@shisyamosk

僕達がライナーを殺したのは…

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[第77話 彼らが見た世界 単行本19巻より]

 

「…交渉…」

「できる余地なんて無かった…」

 

「え?」

 

「何せ僕達は圧倒的に情報が不足してる側だし」

「巨人化できる人間を捕まえて拘束できるような力も無い…」

「…力が無ければ」

「こうするしか…ないじゃないか」

「これは…」

「仕方なかったんだ…」

 

これはアルミンのセリフです。

今日は11/3。アルミンの誕生日だそうです。

なので今回はアルミンについて書きます。

 

この一連のセリフはジャン、サシャ、コニーを含めた調査兵が鎧の巨人(ライナー)を雷槍で仕留めた際のアルミンのセリフです。

このセリフが気になります。

 

まず、アルミンのセリフの途中でミカサが

「え?」と少し驚いていますよね。

 

この「え?」はマンガのテクニックでいえば

アルミンの割と長いセリフを一度区切ることで見た目的に読みやすくするためです。

また、読者が頭の中でセリフを読むときに

ここで一拍置くことでリズムを作っています。

 

そしてストーリーの文脈で見てみると

敵でありながら、かつての仲間だったライナーを殺したことに同期メンバーはとても動揺しています。

ライナー達に対して容赦のないミカサですら内心穏やかではありません。

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[第77話 彼らが見た世界 単行本19巻より]

そしてミカサは隣にいるアルミンの方に目をやり、同じく動揺しているだろうと思い

「アルミン」と一声かけ、ポンと肩に手をやります。

 

その次のコマがこれです。

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[第77話 彼らが見た世界 単行本19巻より]

 

サシャとコニーはただただ耐えきれず泣き伏せました。

そばにいたジャンも、泣きたいのを堪えて2人を叱咤します。

きっとアルミンだって大変だろうとミカサが気にかけた矢先、この長セリフです。

 

これにミカサは驚いているように見えます。

 

みんなはただ動揺するばかりなのに、アルミンだけはバンバン頭が回っている。

口も回る。

アルミンが聡いことは知っていても、まさかこの期に及んで相変わらずその調子なのかとミカサは考えたかもしれません。

 

でもアルミンも動揺していることに変わりはありません。

もしかしたら、これがアルミンの動揺の作法なのかもしれません。

 

思い出すのは単行本8巻。

 

アニを地下道に誘導することに失敗して、巨人化された直後もアルミンは逃げながら失敗を反省してます。

 

それに調査兵団の壁外調査時、襲撃した女型の巨人を「巨人化能力を持った人間」だと考え至ったのも、女型の巨人から追いつめられているときです。

 

どうやら追いつめられると頭を回すのはアルミンの癖のようです。

それは動揺を誤魔化そうとしているのか。

俺には、とにかく必死に自分の置かれている状況を理解しようとしているように見えます。

 

単行本26巻。

超大型巨人の力を使って、マーレの軍港を壊滅させたときもアルミンは

「……これが」

「君の見た…景色なんだね」

「ベルトルト…」

と言っています。

 

自分は何をしたのか。

それはどういうことか。

何故したのか。

結果どうなったのか。

他の選択肢は?

今、どんな状況なんだ?

その中で自分には何が出来て、どうするべきなのか?

 

とにかくアルミンは考えるのをやめない。

それはむしろ追いつめられれば、それだけ思考が加速する。

 

アルミンはそんな人なんだな、と思います。

 

そして気になるのはセリフの中身。

特に

「仕方なかったんだ…」

と言ったこと。

 

この、「仕方ない」というセリフはアルミンに限らず色んなキャラが作中で度々使っています。

 

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[第78話 光臨 単行本19巻より]

ベルトルトや…

 

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[第100話 宣戦布告 単行本25巻より]

エレンも。

 

この「仕方ない」には、全てにかかっています。

 

自分や相手の犯した罪。

誰かがやらなくてはいけなくなったこと。

それまでの背景や当事者の状況について

「仕方なかった」と述べています。

 

このセリフが多用されることに、俺はこの作品に込められた何らかのメッセージ性を感じとっています。

 

でも具体的にどういった意味なのかはイマイチよくわかりません。

何せ2019年11月3日現在、未だこの作品は完結していませんからね。

でも考える価値のある事柄だと思います。

今、答えがハッキリしていなくとも、考え続けていく価値があります。

 

仕方なかった。

仕方がなければ、その罪は許されるのか。

当事者はそれで納得することができるのか。

 

この作品で、このセリフが使われるときは、どれもネガティブなニュアンスを孕んでいます。

 

何も

「うん、仕方ない仕方ない。よし、じゃあ切り替えて前を向きましょう!」

とは言ってません。

 

仕方がないからと言って事実が形を変えることはありません。

遺族の無念が癒されることもなければ

手を汚した者の心が救われることもない。

罪は罪。

壁を破壊したライナーやベルトルトも、ただ、あの世の中が憎悪を抱えたまま回っていくために必要な辻褄合わせ。その順番がたまたま回ってきただけのようにも俺は見えます。

 

そんな事実を前にして、自分には何が出来るのか。

さっさと裁かれてしまえばいいのか。

 

罪を裁くために、今度は誰が手を汚しましょうか?

 

罪人の命を背負ってもらうのは誰にするか?

 

そんな途方もない問題。

 

それでもアルミンは考えるのをやめることはない。

 

きっと。

 

今日はアルミンの誕生日。

およそ誕生日に向かないしんどい話でした。

というかアルミンは生まれてきて良かったと自分に思えるのかな?

そんな未来が待ってるのかな?

 

だからこそ彼を祝福すべきだし、今後どうなってもアルミンを、エレンを、ライナーを、ベルトルトを、作中の誰だって見限りたくはないんですよね。

読者は、ただただ行く末を見届けることしかできないから。

 

アルミン、誕生日おめでとう!

 

長文お疲れ様でした。

 

子種おじさんの悪

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[第122話 二千年前の君から より]

我が巨人軍は永久に不滅である

 

通称、子種おじさん。

棚ボタでのし上がった人。

古代エルディアの族長ですね。

名前はフリッツ。なんちゃら・フリッツ。

 

今回は彼の話です。

俺の中で122話が止まらない。

神回ですよ、ホント。

 

エルディア族長。

ひどい奴ですね。

クソ上司。

給料は俺の精液だ。

自分を庇って死にかけてる人に「起きて働け」ですからね。普通言う?

 

彼の何が面白いって

天罰が下らなかったことです。

彼の半生を振り返ると、

始祖ユミルの巨人の力を使い、1世代でエルディアを発展させ、周辺国を鏖殺し、臣下の裏切りには始祖ユミルから守ってもらい、おじいちゃんになるまで生き残り、最期には家族に囲まれながら、遺言を残すことに成功し、自分の国の繁栄を信じながら逝きました。

とても族長冥利に尽きる人生というか、きっと権力者としてあらゆる人生の美酒を味わい尽くしたことでしょう。

 

大往生じゃねぇか。

なんだこれ。

 

なんか納得いかねー。

…まあ、実際はこんなもんかもしれないですね。

悪い行いをした者には、いつか必ず天罰が下るなんてのは、それこそ都合の良い妄想なのかも。

 

…物事を善悪で語ると拉致が開かなくなるので

今回はエルディア族長について視点を変えて書きます。

自分も含めて世間では始祖ユミルをずっと苦しめてきた張本人として印象が最悪な彼ですが、ちょっと冷静になるために色々考えます。

 

まず、始祖ユミルへの待遇なんですが、よくよく見てみると巨人化能力を得てからの始祖ユミルは、奴隷にしては破格の待遇を受けているんですよね。

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[第122話 二千年前の君から より]

特に跪くこともせずに、族長の玉座の隣に立つことを許されています。ただの奴隷の1人だった始祖ユミルが。

 

この時点でのエルディア族内の権力の大きさは

 

族長>始祖ユミル≧フリッツ家>エルディア族メンバー>奴隷

 

というのが、俺の見立てです。

何かしら間違ってるかもしれませんが、とにかく始祖ユミルが大出世していることは事実でしょう。

 

そしてエルディア族長のあのセリフ。

 

「褒美だ。我の子種をくれてやる」

 

キレッキレの名セリフですね。

今日日エロ同人誌でもこんなセリフ見ねえよと言われてました。

 

でもこのセリフ、どういうことかというと、この記事をここまで読めば分かるように

 

相当な地位と権力をくれてやる。

 

と言ってるんです。エルディア族長は。

ちゃんとご褒美になってるんですよ。

俺が使えばただの世迷いごとですが、時の権力者が使うとガチの褒美になります。

 

あれ?

褒美が出世なら単に地位だけ与えればいいんじゃないの?

なんで子どもを孕まないといけないの?

始祖ユミルに惚れたんか?このおっさんは。

 

そう思った方もいるかもしれません。

俺もそうです。

 

その事情に何らかの背景を感じますね。

地位というものが家系に加わることとセットだったのか…

そして巨人化の力の自分の子孫への継承を意識したのか…

いまいちよくわかりませんけど。

 

他にも逃した奴隷が巨人化という超人的な力を身につけて帰ってくる、なんて前代未聞です。

きっと部族内でも相当な混乱があったはずです。

「巨人の力で復讐される」

「彼女に酷いことをしたのは誰だ」

「実はわたしはあなたを哀れに思っていた。だから復讐は見逃してくれ」

…といった混乱。

奴隷だった始祖ユミルに地位を与えるという采配が、もしかしたらその混乱への応答だったかもしれません。

俺はエルディア族長はたまたま始祖ユミルを手に入れたから自分の部族を発展されられたんだ、とばかり思ってましたが、

彼はその

「巨人兵器の運用」

に成功していて、その点が彼の優れたところだったのかもしれません。

何気にすごくね。未知の力なのに。

 

そして、これは俺の予想なんですが、巨人化能力を得てからの始祖ユミルはめちゃくちゃ豊かに暮らしていたと思います。

 

下手すりゃその辺のエルディア族メンバーよりも。

 

巨人の力でバンバン戦争に勝利し続けているので全体的にエルディア族の生活レベルは底上げされていきます。

奴隷時代の暮らしとは比べものにならないくらい衣食住に恵まれていたことでしょう。

戦争で自分が敵兵を殺しまくることに対してどう思っていたかはわかりませんけど。

 

始祖ユミルの豊かな暮らしは本編ではカットされました。

 

なぜか?

 

その理由は、今回の話では始祖ユミルは環境と時代に苦しめられてきた被害者の1人でなければいけないからです。

 

「ずっと孤独に苦痛と労働を強いられてきた女の子をエレンが助ける」

 

このストーリーに俺たちは感動するからです。

 

そんな中で、割といい暮らししてたことを描いても、このストーリー構造の「抑圧」と「解放」のコントラストが弱まるだけです。

 

でもいい加減落ち着いてきたので、今俺はこんな記事を書いているのです。

 

本編で直接描いてはいないけど、始祖ユミルの暮らしが改善されていることは状況的に察せられます。

そのことについて指摘するのは、もしかしたら今回の話の感動に水をさす空気の読めない記事かもしれませんね。

 

でも残念ながら、それでも始祖ユミルは笑顔になりません。

彼女の心は曇ったままです。

 

族長からしたら不思議です。

 

地位も富も与えたのにまだ満足しないのか。

こいつは一体何がしたいんだ。

 

というのが族長の本音かもしれません。

 

しかし、エルディア族より遥かに豊かな生活を送っている俺たちなら薄々気づいています。

豊かさ=幸福とは限らないと。

そして話は変わって、もうひとつ確認しておきたい点が

エルディア族長だけが特別な悪ではない
というものです。

あの時代に生きるのはエルディア族だけじゃありません。
敵として登場したマーレに限らず、他にも様々な部族が存在しています。
そして奴隷制度がエルディア族特有の文化だったわけではないはずです。

…まあ、それが余計にこの世界観を陰鬱にしているんですけども。

どこへ行ってもこんな調子なのか、と。

巨人の力で世界を支配していたことも、たまたま強力な武器が手に入っただけであってエルディア族長は歴史上いくらでも目にする「ただの支配者」だというのが俺の最終的な印象です。

 

彼の行いを、完全なる潔癖の立場から悪だと糾弾する者が、果たしてこの世に存在するのだろうか?

俺には疑問です。

 

なぜなら彼が行ったのはエルディア帝国の樹立です。

帝国の運営です。

彼の国を帝国だと言うのなら、エルディア帝国が行ったのは悪行ばかりではありません。

それが垣間見えるシーンが作中にあります。

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[第108話 正論 単行本27巻より]

言語の統一は帝国の功績です。

大多数の人々を一つのグループにしたのが帝国です。

その帝国内で(敵対する国々と比べ)円滑になった人々のネットワークの中で生み出されるテクノロジー、宗教、政治制度、文化、科学、その他様々な「恵み」により人類は豊かさを手に入れました。

 

マーレの公用語はエルディア語だそうです。

ならばヴィリー・タイバーはエルディア語を用いて諸各国の協力を仰ぎ宣戦布告をしたことになります。

エルディア語の生みの親に対して。

 

参考までにサピエンス全史(著:ユヴァル・ノア・ハラリ、訳:柴田裕之)という本では帝国という存在をこのように捉えています。その表現が気に入ってるので、抜粋して引用します。

ヨーロッパの諸帝国はあまりにも多様なことをあまりにも大規模に行ったため、帝国についてどれほど好き勝手なことを言おうと、それを裏づける例はいくらでも見つけられる。これらの帝国は死や迫害、不正義を世界に広めた邪悪な怪物だと思ったとする。だとしたら、彼らの犯した罪でたやすく百科事典が一冊埋まるだろう。いや実際は、新しい医療や経済状態の改善、高い安全性をもたらし、被支配民の境遇を改善したのだと主張したいとする。それならば、帝国の功績で別の百科事典が一冊埋まるだろう。

[サピエンス全史・下 文明の構造と人類の幸福 第15章 科学と帝国の融合 より]

 

…といいつつ、奴隷の立場の方々がその境遇から解放されるのは始祖ユミルが生きた時代から遠い遠い未来の話ですけどね。

 

人類の発展において、奴隷制度は避けては通れない道だったのか…

そんな大きな問題に眉を潜める夜も、たまにはあってもいいんじゃないでしょうか。

 

帝国という存在は、俺たちと無関係なものではありません。

現代人のほとんど全てが過去の帝国たちの子孫であり、その遺産を享受しています。

かつて帝国が築きあげた礎の上に現代の文明は成り立っています。

その事情がある以上、俺が気をつけたいこと。

 

それは、もし自分がエルディア帝国を、エルディア族長の行いを悪だと罵るならば、それと同時に自分は「悪の手先」になりかねない、という事実です。

 

長文お疲れ様でした。

始祖ユミルの舌は無事か?

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[第122話 二千年前の君から]

 

え?

 

始祖ユミルって…

 

舌…

 

ちゃんとあるよな?

 

始祖ユミルが全く喋らないのは作品の演出的にセリフをもらっていないんじゃなくて、そもそも喋れないのでは?

 

え、こわいこわいこわい

 

エッッッッッッッッッッッッッッグ🍳

 

…って思い始めて広がった感想を今回書きます。

 

グロ注意ッ

グロ注意ッ

 

…今更ですね、進撃の巨人を読んでるんだったら。

 

先に俺の意見を言うと

始祖ユミルは舌を切られていると思います👅

でも巨人の力を授かった時に舌も復活しているはずです。

 

…まあ、そうだろ。っていう読者もたくさんいて、実はわざわざ記事にするまでもないことかも知れませんが、今回はこういう話です。(汗)

 

その根拠はこのページ。

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[第122話 二千年前の君から]

 

まず1コマ目。

真ん中にいる少女がおそらく始祖ユミルです。

 

状況から察するに、とある村がエルディア族に侵略され、または、この村を治めている豪族が戦争で敗れ、そこに住んでいた村人、始祖ユミルらが捕らえられ、その戦果としての奴隷にされたんでしょう。

 

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[第122話 二千年前の君から]

 

そして2コマ目。

グロいコマですよね。

 

どうやらエルディア族は手に入った奴隷は舌を切ってしまうのがセオリーらしいです。

 

もしかしたら何かヘマをした奴隷への罰のシーンかもしれません。

なにぶん情報が少ないので判断が難しいですけど。

 

でも、今回は、このコマの配置の順番からいっても

「エルディア族は手に入れた奴隷は初手で舌を切り取る」ということで話を進めます。

 

だから始祖ユミルも捕まった際、例外なく舌を切られている、と思ったのです。

 

直接、そんなシーンは無いですけど。

 

描けるか、んなもん、少年誌で。

 

だからこのコマ、どういうことかと言うと

 

「始祖ユミルの舌も切られてますからね。気づいてね。少年誌だから描けないけど」

 

って意味なんじゃないかな、って思ってます。

 

じゃないと、このコマ、あんま描く意味ないなぁ、って思っちゃうんです。

 

エルディア族ひどい。

奴隷かわいそう。

くらいの意味。

 

始祖ユミルの生い立ちの話の中で、わざわざ「奴隷は舌を切られる」って設定を乗っけてるってことは始祖ユミルに関わる設定なんじゃないでしょうか。

 

…といいつつ、違う可能性も全然あり得るな、とも思っています。

 

始祖ユミルの舌が無事な世界線

 

エルディア族に僅かばかりの良心が芽生えていることに期待して。

 

わかりませんからね、実際は。

始祖ユミルがパカって口の中を見せてくれたわけじゃないので。

 

舌が無事な理由も踏まえて、エルディア族の奴隷への待遇について考察していきます。

 

まず何故、奴隷は舌を切られるのか?

 

これは自分がエルディア族になったつもりで、一族を運営する者の立場や都合を考えれば見えてくる気がします。

 

結局、奴隷って道具なんですよ。

労働力。

働き手。

鋤を引く牛🐂とかと認識は変わりません。

 

ちょっと賢い牛。

手先が器用な家畜。

 

エルディアのために働く以外のことは特にして欲しくありません。

 

族長になったことないんで、素人の予想ですけど。

 

中でも一番奴隷にして欲しくないこと。

奴隷を扱うにあたって最も警戒すべきこと。

 

それは奴隷の反逆です。

 

反逆?デモ?謀反?反乱?

この場合どれが適切なんだ?

 

とにかく奴隷に裏切られることだけはあってはなりません。

他所で戦争している間に懐から刺されたらたまったもんじゃありません。

 

特に反乱の成功確率が上がるのが奴隷同士で結託するとき。

この結託がこわい。

 

だから結託するのに必要なコミュニケーション能力をエルディアは奴隷から奪った。

 

言葉は教えなくても勝手に覚えますから、やっぱり舌を切るのが一番手っ取り早くて確実なんです。合理的なんです。

 

多分俺があの時代の族長でも奴隷の舌を切ります。

あの状況なら。

ついでに奴隷の食費も抑えたいので、ご飯の代わりにコカの葉とか噛ませたり…

 

…なんかもう、うんざりしてきます。胸くそ悪い。

 

でも、そんなことしたら傷口から破傷風とか、最悪、伝染病が流行ったりしそうですけどね。

 

…で、始祖ユミルの舌が無事だと思う理由。

これまでと同じく合理的に考えるなら、子どもには奴隷の反逆、奴隷同士の協力に関与するのは難しいからです。

というか舌なんて切り取ったら失血多量で死ぬんじゃないのか…

大人よりずっと弱く小さな子どもなら尚更です。

 

だから支配者の良心を抜きにしても、合理的な理由から子どもだけは舌切りは見逃されていた可能性があります。

 

答えは分かりません。

どちらの可能性も十分あり得ます。

 

だかそこが面白い。

 

これは物語の中の話ですけど、実際、このエルディア族の生き様はどれくらい現実的なんでしょうか?

 

歴史上、実在した古代の豪族たちは一体どんな暮らしをしていたのか?

奴隷の扱いはいかがなものだったのか?

自分は無教養なので、その点は語れません。

 

興味のある方はこれを機会に奴隷の歴史とか調べてみると面白いかもしれませんね。

 

きっとクソみたいなエピソードがわんさか出てくるに違いありません。

 

長文お疲れ様でした。

神演出!なぜ第1話の巨人は顔を隠すのか?

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[第1話 二千年後の君へ 単行本1巻より]

 

こんにちは!進撃の巨人です!

でっかい巨人が人を食べるマンガです!

 

でも更にでっかい壁が巨人から守ってくれてるので大丈夫です!

 

でもでも更に壁よりでっかい超大型巨人が出てきて壁を蹴破りました!

さぁどうする?!

 

これが進撃の巨人の連載用のシナリオです。

この記事を読んでるあなたが進撃の巨人の連載を任され、このシナリオを渡されたとして、机に向かい、目の前の真っ白な原稿用紙にどのような第1話を描きますか?

 

伝えたい情報はたくさんあります。

中でも読者にインパクトを与えるのは

超大型巨人の存在と、

もうひとつが、人を食べる巨人の怖さ、だと思います。

 

自分の作品の面白さを伝えるためにどのように描くのか?

どのように魅せるのか?

…と何かしら仕掛けを捻ることを演出と言ったりします。

 

じゃあ実際の第1話の演出とは?

 

これが今回のテーマです。

 

第1話において、個人的に素晴らしいと思ってる演出が本記事のタイトルにもあるように

 

「巨人の顔を隠した」

 

ことです。

超大型巨人以外は。

 

第1話を振り返ってみると、通常の巨人が登場するシーンは3回。

 

・序盤の巨大樹の森で調査兵団と戦うツルッパゲの巨人。

・ハンネスがエレンに説明してる壁の補強作業中に見かけた巨人。

・最後のページの破壊された壁の扉に集まる複数の巨人。

 

この巨人たちはみんな俯いていたり、背中を見せていたり、どれもが顔を隠しています。

 

巨人が登場するマンガなのに、その巨人の顔を隠す?

かなり変わったことをやっています。

 

俺だったら

「巨人が人を食べるマンガでしょ?

だったらさっさと人が食われるシーン描くべ!」

ってなるんですけど、このマンガはそれをしなかった。

 

なぜか?

 

理由は超大型巨人がいるから。

 

超大型巨人を第1話の主役にしたんです。

作品の主役はエレンだけど

第1話の主役は超大型巨人です。

 

おそらくは進撃の巨人といったらコレ!みたいなメインビジュアル的な役割を持たせるためもあると思います。

進撃の巨人?ああ、あの人体模型みたいなアレ?みたいな。

俺も単行本1巻表紙の超大型巨人の顔に惹かれてこのマンガを読み始めたので、その効果はバッチリです。

 

それに当分は超大型巨人が物語の中心にいるからでもあると思います。

当時はこの超大型巨人とやらがラスボスで、ずっとこいつとエレンたちが戦っていくんだろうなぁ、と思ってました。

まあ、そんなことなかったんですけど。

 

ともあれ、主役が超大型巨人であるために、その他の巨人は存在だけ匂わせつつ、一旦脇に置いておく、というのが第1話のとった作戦です。

というか第1話では「巨人は人を食べる」という情報すら切ってます。なんとなく「巨人って人間の敵なんだな」って雰囲気でやってます。

読み返すまで気づかなかった…

 

今回はとりあえず超大型巨人の顔だけ覚えといてくださいね、ってかんじですね。

 

第1話の主役は超大型巨人。

そう考えてみると第1話のシーンは全て

「超大型巨人襲来」のためのお膳立て、のようにも見えてきます。

そのトドメはアルミンの

「100年 壁が壊されなかったからといって今日壊されない保証なんかどこにもないのに…」

ってセリフですね。

 

言わんこっちゃない。

 

この「超大型巨人襲来」で特徴的なのは

前触れが一切ないことです。本当にある日突然、いきなり現れます。

当人たちは全く予想のつかない大災害だった。

この現象をマンガではお膳立てしてるから面白いですね。

作中の人物にとっては何の前触れのないことだけど読者はこれから何が起こるか知っている。

 

だって冒頭でやってたから。笑

 

先にゴールを見せないと何のお膳立てなのかわかりませんからね。

 

第1話は超大型巨人が主役。

じゃあ人を食べる巨人は?

彼らは第2話の主役になってもらってます。

 

「おそろしい巨人が人を食べる」

 

これを盛り上げるために、この作品はかなり入念な準備をしています。

「超大型巨人襲来」の時と同じように。

 

その準備の1つが巨人の顔を隠したこと。

最初期の巨人は得体の知れない存在として描かれます。

顔を隠すことで巨人が「得体の知れない何か」になるんです。

こいつらは何者なのか、どこから来たのか、どんな奴なのか、一切の素性は分からないけど、とりあえずその巨人から身を守るために50mくらいの壁が必要らしい。

そいつらが破られた壁の穴からゾロゾロ入ってくるんです。こええよ!

 

そしてもうひとつの準備が第1話の調査兵団のくだり。

第1話序盤で巨大樹の森で調査兵団が立体起動を駆使して巨人にヒロイックに切りかかるところでシーンが切り替わり、次のシーンでは負けてボロボロになって町に帰ってきます。

何の成果も得られませんでしたよね。

どうやって負けたのかは描きません。

分かるのは悲惨な結果だけ。

その方が不気味です。

これで読者は「巨人というのは調査兵団とかいう戦闘集団をコテンパンにしてしまうような奴なんだ」と認識します。

そんな奴らが破られた壁の穴からゾロゾロ入ってくるんです。こええよ!

 

以上のような準備を、お膳立てを経て、満を辞して第2話で巨人がやってきます。

その作中で初めて顔を披露した巨人が例のこいつです。

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[第2話 その日 単行本1巻より]

この巨人の意味わからんくらい不気味な顔が個人的な第2話の瞬間最大風速ですね。

そんでこんな奴が人をパキパキ食べ始めますからね。

この瞬間まで、巨人が人を食べるっていう情報は本編では伏せてます。

まあでも大体の読者は読む前から風の噂で耳にするんだろうけど。

 

このシーンのせいで、巨人って言ったらこいつ!みたいに印象付けられます。

人を襲う巨人はこんな奴ばっかなんだ、みたいな。

これが巨人というものなのか!みたいな。

初めて見た生き物を親だと思ってしまう雛の刷り込みみたいですね。

初登場のインパクトってこんなに大事なんですね。

そのインパクトのために物凄く計算されている第1話、第2話だな、って思いました。

 

このダイナ巨人の御尊顔を叩きつけるために、

ダイナ巨人の顔を「巨人の顔、初公開」にするために、これまで巨人の顔を隠し通してきたんです。史上最低な第一印象を記録するために。

 

まとめると第1話の巨人がずっと顔を隠している理由は、一つは第1話は超大型巨人が主役であり、超大型巨人のためのストーリーであるから、であって、

もう一つはこの第2話の巨人の不気味な顔を披露するための準備であったから、

というのが今回の考察です。

 

なんというか、手持ちのカードの切り方が病的にうまいんですよね。進撃の巨人って。

 

この、ヤバいこと起こるぞ〜って溜めて溜めて溜めてドーン!っていう手口は今後この作品で何回も使われます。

最近だと「地ならし」がそうですね。

 

それでは今回はここまで。

長文お疲れ様でした。

始祖ユミル。

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始祖ユミルが巨人を作ってたんですね。

謎の砂漠で1人でずーーーーーーーーーーーーーっと。

 

ずっと土をこねてたのか…

気が狂いそうですね。

 

上の画像は俺のファンアートです。

エレン用のあの巨人はノリノリで作ってそうだなっていう妄想です。

 

でも巨人を作ってたのなら、そのデザインは結構色々あるので本人的にちょっとした遊びも入ってたのかな。

 

(え?ファルコって人用の巨人?…うーん、ファルコ……名前が鳥っぽい…鳥…鳥…よし、クチバシつけよう)

 

みたいな。

 

でも壁の巨人(50m)数万体、一気に発注が来た時は流石に愚痴のひとつも溢したんですかね。

いい加減にしろや、って。

 

改めて、すげぇ設定だな…

 

マルロは自分を生きた。

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[第31話 微笑み 単行本8巻より]

 

マルロってキャラ覚えてます?

だらしない憲兵団を変えたがっていた人。

 

フルネームで「マルロ・フロイデンベルク」というそうですね。調べるまで知らなかった。

 

簡単に紹介すると、憲兵団所属、後に調査兵団編入、そしてウォール・マリア最終奪還作戦に参加しそこで戦死した人です。

 

ふとマルロのことが気になってきたので彼について書きます。

上の画像は8巻の冒頭のアニとマルロの問答のラスト。このやりとりって物語的に何で必要だったんだろ?って思ってました。

タイミング的にはvs女型の巨人の最中にやってるんですよね。その割には女型の巨人捕獲時にはマルロ達憲兵団新兵はただ動揺していただけで大して物語に関わってこない…

多分その時はアニのキャラの掘り下げくらいの役割だったのかな?あの問答のシーンは。ついでに憲兵団も紹介しておくか的な。

 

このシーンは8巻を読んでた当時は読者に向けた憲兵団の社会見学くらいにしか思ってなかったんですけど、今振り返ると、実は、19〜20巻辺りのウォール・マリア最終奪還作戦編とセットになってるんだなって気づきました。


この8巻のシーンは「エルヴィンの罪の中身」だと認識しています。

獣の巨人を討伐するために新兵を囮にしたアレですね。あの特攻にマルロも参加し、そして石礫を浴びて戦死します。

あの作戦を決行したというエルヴィンの罪の話。

 

進撃の巨人の一貫した道理として何かを成し遂げるためには必ず大切な何かを犠牲にせざるを得なかったけど、ウォールマリア編ではとうとう「未来ある若者」を犠牲にしてしまった…ってのがあの新兵特攻の酷さであって…

 

守るべき若者を犠牲にする…この禁忌に触るかんじがなんとも言えずゾクゾクします。


でも物語的にはただ「新兵特攻させます」じゃ物足りない、言葉だけなので。強い言葉だけ使ってたら「絶望という娯楽を読者に提供します」っていう商人根性が透けて見えてしまう。作者がそう思ったのかは知らないけど、ただ酷いことさせるだけじゃなくて、ちゃんとそのディテールに拘るのがこの作品の魅力ですね。


…という前提で、この憲兵団旗のコマが何を表しているかというと、これは

 

「マルロが将来、憲兵団の悪癖を変えられたかもしれないという可能性」

 

なんです。

マルロ独自の視点で何か大切なことに気づきかけてるシーン。

エルヴィン、というか調査兵団はこの可能性を摘み取った、という事実に繋がる。ひでえ!


新兵を犠牲にした。

…では新兵の中の何を?

大切なのは命だけじゃない。

 

命は大切だ。それが犠牲になるのは悲しいことだ。それは当然です。でも当然なことばかり主張されても読者は頷くしかなくなる。うん悲しいことだよねって頷かざるを得なくなり、なんか物語に乗れない。でもマルロの可能性を指摘することで、命以外の何を失ったのか実感してしまう。

 

誰かが死ぬということがどういうことか。

 

そのために8巻のシーンは読者にとって必要だったんだなって納得してます。


これが「エルヴィンの罪の中身」です。

エルヴィン本人の苦悩の内臓です。


じゃあなんでマルロは調査兵団編入してんだ、憲兵団を変える理想はどこいった??ってのが今回の焦点です。


ここが本当おもしろいんですけど

マルロの「憲兵団を変えたい」という理想は調査兵団が先に叶えちゃってますよね、革命編で(笑)

一応マルロ本人は途中から合流する形で参加できてはいるけど…


速攻で人生の目標が無くなっちゃったんです。

その事実をマルロはどう受け止めたのか?


素直に喜んだのか?

 

不完全燃焼だったのか?

 

俺的には後者だと思ってます。

何故なら奪還作戦に参加してるから。


それをヒッチは止めましたね。

俺もヒッチに大賛成だけど、残念ながらそれじゃあマルロの魂は救われない。


自分の情熱を養ってくれるのは最早調査兵団くらいしか残ってない、と考えたんじゃないでしょうか。


マルロは誰が見ても前線に立つような奴じゃない。

スーパー内政向きの人間です。

むしろそっちのが全然輝ける可能性はあった。


でもマルロは「前線に立とうとする奴」だった。


それは調査兵団が扇動したからかもしれない。

ならばマルロも結局、大きな流れに逆らえない普通の人だった。


ただその「大きな流れ」というものが

マルロ的には憲兵団入団時には「気に入らないもの」で

調査兵団編入時にはマルロが「気に入るもの」だっただけの違いで…


自分の能力と性分が噛み合ってない人間の、傍から見た悲しさ、もどかしさ。


でも結局はマルロは自分の道を自分で選んだんだな、と思う。

それがたとえ自分の能力を見誤っていたとしても。

たとえ本人の気づかない所でもっと輝ける可能性が他にあったとしても。

それでもマルロはウォール・マリア最終奪還作戦に参加した。

 

これが自分の道を自分で選ぶというものなのかもしれません。


自分のことを他人に決めてもらうのが正しいこととは思えないけど、かと言って自分の判断が正しいとも限らない…

どっちもどっちだよ。


そんなことをマルロの半生が物語っているような気がしました。

 

こんな感じですかね。

あまりに悲惨な最期を遂げ、それでいてとても人間臭く、つい活躍を応援したくなるようなキャラクターだったので、なんというか、自分の中のマルロが上手いこと成仏してくれないかなって思って、彼を振り返ってみました。

 

長文お疲れ様でした。

はじめに。このブログについて

はじめまして。

進撃の巨人のファンの者です。

 

当ブログは進撃の巨人の感想を、ネタバレを一切気にせず載せていきます。

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では、これからよろしくお願いします。