無敵の始祖を仕留めた凶器
どうも、始祖ユミルのストーカーです。
今回も122話の話です。
俺は何回122話の記事を書くんだ??
始祖ユミルは何故死んだのか?
本記事の主題はこの一言に尽きます。
始祖ユミルの死亡シーン。
初見はスルーしてたんですが、だんだん気になってきました。
え?
なんで死んだの?
あらすじを振り返ると、家臣の裏切り者がエルディア族長に向けて投げた槍を始祖ユミルが庇い、そこで息絶えました。
巨人の修復能力があれば槍に刺されてもすぐ傷口は塞がるはずです。
え?
なんで死んだの?
何かしら理由はあるはず。
考えすぎ、ではない。
何故ならエルディア族長の発言。
「お前が槍ごときで死なぬことはわかっておる」
…と、わざわざ指摘しています。
これは、最強の始祖の巨人が槍一本でやられてしまった、という事実が本編のあらすじに関わってくることを意味してると考えています。
死因は『説明は』されていません。
物語の読みどころですね。
始祖ユミルが何故死を選んだのか、それはあの状況を注意深く確認することで見えてきます。
今回は始祖ユミルの死因の話です。
これまで書いてきた記事は、突然大量に描写された始祖ユミルの生きた時代背景について事実確認をしていくような内容でした。
ですが今回は個人的な解釈が多分に含まれます。十人十色の解釈があることは承知していますが、俺が唯一気をつけられることは自分の解釈にひたすら説得力を持たせることだけです。
巨人能力者は槍に刺されたぐらいでは死にません。しかし、劇中ファルコが発言していましたが巨人化能力は本人の気持ち、生きるという強い意志に左右されるようです。
ならば始祖ユミルは槍に刺された際に、何かしらで心を折られ生きる意志を失ったため死亡した、と言えます。
物理的な死因は槍ですが、そこにさらにもう一押し、始祖ユミルにトドメを刺したものは何でしょう?
思うにそれはエルディア族長の言葉。
どういうことか、一連の4pを確認しましょう。
1p目。
2p目。
3p目。
4p目。
[122話 二千年前の君から より]
これはマンガですので、キャラクターの内面はマンガ的技法で表現されています。
注意してもらいたいのがページ位置です。
見開きで偶数ページは右側。
奇数ページは左側です。
そしてページをめくる際は奇数ページの最後のコマが次のページへと何かしらの流れを作っていたりします。
ページをめくるとあ!っと驚かせたりするのを『めくり』と言ったりします。
この4pはこのマンガ的な仕様を利用して演出を組んでいます。
まず1p目。
始祖ユミルが槍にブッ刺されて倒れます。
そして2p目。
ここが個人的に一番注目してて、というのもこのページだけやたら贅沢にコマを切ってるからです。
122話のあらすじを思い出しましょう。
始祖ユミルの半生、古代エルディアの軌跡、始祖の巨人の覚醒、始祖ユミルの死、エルディア族長の遺言、エレンのあすなろ抱き、そして地ならしの発動。
これだけの物量を『たった』45pに収めなくてはなりません。全く無駄を許さないネーム構成を求められる中で、このページだけ顔のアップが連続しています。
ということは、この顔アップのページにも上記のあらすじに匹敵する価値がある、と作者の諌山先生は判断されている…こう考えることができます。
本当はどうなのか分からないけど、少なくとも俺にはこの作品の過去の様々な高品質な演出から、それだけの信頼があります。
一見すると無駄なシーンに見えます。
危うく読み飛ばしたり、さっさと次のページをめくってしまうようなシーンです。
しかし、4p目にはすでに始祖ユミルは死を選んでしまってるので、トドメを刺した瞬間は3p目にあり、そして2p目は3p目と『めくり』の関係にあります。
…というのが、始祖ユミルの死という事件をマンガ的技法の視点から捉えたものです。
この視点に立つと何が見えてくるか。
それは始祖ユミルの感情の起伏です。
もちろん俺は彼女の内面は分かりませんし、始祖ユミル以外始祖ユミルじゃないのですが、2p目と3p目の流れが始祖ユミルの感情の起伏を表していると読んでますのでそれをお伝えします。言葉ではなくコマの配置で表現しているのです。
まず2p、1コマ目。
倒れた始祖ユミルの視点から族長、マリア、ローゼ、シーナの三人娘を見上げています。
娘たちは泣いています。
2コマ目。
倒れた始祖ユミル。
…はい、一コマずつチェックしていきます。
3コマ目で1コマと同じアングルで族長の顔にアップしています。イコールこのアングルは始祖ユミルの視点なのでこの人は族長のリアクションを気にしています。
族長の細やかな表現が確認でき、驚き、悲しみ、動揺、様々な表情をしている『ように』見えます。
そして4、5コマで始祖ユミルの顔が連続でアップします。
この執拗な顔アップに意味を持たせるなら…
読者にどんな印象を抱いて欲しいのか…
無言を貫くあのシーンに、どうしても言葉を乗せるなら、それは始祖ユミルの『期待』を表そうとしているのではないでしょうか。
族長にも、周りの娘たちのように私のために泣いて欲しい。
槍を庇ったことを評価して欲しい。
傷口を労って欲しい。
娘たちと同様に顔を歪める族長を見て、始祖ユミルは、ちょっとだけ期待してしまった。
族長がどんな人か知っているけど。
自分に何をしてきた人なのか知っているけど。
それでもつい気になってしまう。
一緒に過ごしてきた13年の歳月の間に、何か変化があったのだろうか?
私は…族長の何だろう?
「何をしておる」
「起きよ」
「お前が槍ごときで死なぬことはわかっておる」
「起きて働け」
「お前はそのために生まれてきたのだ」
「我が『奴隷』ユミルよ」
…これが族長の答えでした。
エルディアのために巨人の力を捧げ、3人娘を産んだ始祖ユミルは結局ただの奴隷でした。
敵対するマーレを鏖殺し、あらゆる攻撃は立ち所に治してしまう。
エレンたち、そして後世の世界中の人々を散々苦しめている無敵の巨人のルーツは、こんな簡単な言葉で仕留められました。
もし、族長に少しでも始祖ユミルに情がわいていたなら。
始祖ユミルのささやかな期待に応えることができたなら。
何かが違っていたのかもしれない。
思い出すのがクルーガーの遺言。
「壁の中で人を愛せ」
それが出来なければ繰り返すだけだ。
同じ歴史を。
同じ過ちを。
何度も。
あの予言じみた遺言。
まるで未来を見てきたかのような。
始祖ユミルの死、という事件が今後物語に関わってくるなら、この辺りのセリフと合流するんじゃないかなと思っています。
そんなヒマあるのか分からないけど。
連載スケジュール的に。
この考察では、始祖ユミルは族長に対して実はこっそり期待していた。と、決めつけていますが、これはこの前提に立つとこの辺りの物語がきれいに説明できる、というものです。
もし、始祖ユミルが族長に対して特になんとも思っていないのなら。
自らを顧みず槍に飛び込めたのは何ででしょう?
義務だから?
立場だから?
命令だから?
そんな理由だけで犠牲になってしまえるものなのだろうか?(反語)
と思ってしまいました。
また死後、始祖ユミルは座標砂漠にて相変わらず王家の血族に服従し続けていました。王家の望むまま、巨人継承者の望むまま、あの世で巨人を作り続けています。さながら死んだ子どもが父母供養のために賽の河原で石を積み続けるように。
そこまでする原動力な何だろう?
以前の記事で奴隷という性分の話をしましたが、自分の中でだんだんそれだけでは納得できなくなってきました。
勝手に。
長文お疲れ様でした。